私は残念ながら会社員として賃金労働者階級を生きてる。労働はもちろん嫌いだし、そして勤務先のことも嫌いだ。資本主義の仕組みは労働者階級にとってほとんど利点を持たないので、多くの会社員は自分と同じように労働と勤務先のことをまとめて嫌ってると思ってるのだけど、お余所で気軽に会社が嫌いだなどと言ってみると、まあまあな割合で、なんで?と聞かれる。うーん、なんで……なんで? もしかしてみんな会社が好きなのか? いつも具体的に答えられず仕舞いだったので、ここで考えてみる。そしてもう気軽に話題に出さない。(´ー`)
肝になるのは、労働に対する認識だと思う。世の中には「労働は自己実現の手段」「働く(ことは)喜び(である)」という考え方もある。言いたいことはわかる。だけどどう贔屓目に見ても、それ主語デカすぎですよね?ってところから抜け出せない。「私にとって、コーディングは自己実現の手段」「私にとっての、アパレル販売の喜び」とかなら良いよ。全面的に理解できるよ。仮に自分の好みでない、例えば「私にとって、経営コンサルタントは自己実現の手段」「私にとっての、不動産営業の喜び」とかでも、全く問題ないよ。それらは個々人にとっての生き甲斐であって、ピーマンが好き人参が好きみたいな、特に理由はないけど自分と相性の良い活動が見つかってハッピーってだけの話だから。そういう人たちが自営業で成功して、好きなときに好きなように好きなことをしていれば満足できるだけのカネが入ってくる状態になるのが、労働者としての最高到達点だろう。またはそういう人たちがどこかの企業に好待遇で雇用されても、同じく好きに生きてればカネが入ってくる状態を作れる。もっと行って、どうにか爆発して生涯賃金稼ぎきっちゃえたら神だよね。でもそうでない人の方が圧倒的に多い以上、すなわち全人類にとり賃金労働は並て善なのである!とするのは乱暴にもほどがあるじゃろ。資産が一生分できて生活資金を稼ぐ必要がなくなり、24時間365日完全に自由になる、その上で時間を割いてやりたい活動っていうのが本物の自己実現の手段であり喜びなのであって、生殺与奪を握られた状態で「自ら人生の根元的な正しさのために働いてます!」って断言しちゃうのは、いやお前ら洗脳しに来た資本家階級だろとしか思えない。
念のため申し添えておくけど、現代はITの発展のおかげで好きなことでも稼ぎやすくなってる、とか、労働によって得られる心身の健康もある、とか、そういう話じゃない。それらについてはまるっと賛成する。それはそれとして、「生きる⇒カネが要る⇒労働⇒自分の時間取られる」一択かよ! 「生きる⇒何でもあり」にしてくれ、その中の一選択肢としての賃金労働なら残存しても良いから、ということを言いたい。つまりは、私は賃金奴隷って考え方にやや寄っている。奴隷ってのも言いすぎだと思うけどね……選択肢がないだけで、わりかし楽しく生きてはいるからね。
だから、我々労働者はとりあえず生活費の入手だけが確実な全員共通の目的であることを念頭において、いかに効率良く資本家からカネを調達できるか模索すべきだ。手間は少なく時間は短く。それは自営業でも平社員でも部長でも変わらない。経営者……は企業の規模とかによるか。まあ労働者階級に属する経営者は同じ立場だ。パーティーであるべきなのだ、我々は。剣士だけより、弓使いだけより、魔術師だけより、ヒーラーだけより、みんなでパーティー組んだ方が効率良いよねってこと。この中で誰が一番偉い? そんなものはない。肩書は身分ではない。全員、役割が違うだけ。価値としては平等。平社員も、部長も、経営者も、等しく必要な存在だ。
にもかかわらず、会社は、少なくとも我が勤務先は、これを綺麗さっぱり忘れているようだ。以下に挙げる我が勤務先のダメなところは、全てここを原因としているように思う。
勤務先のダメなところ。まず、給料が少ない。これは上述の目的を一目散にぶち破ってくる最初にして最低のダメポイントだ。3倍寄越せ。私は学生時代に就職先を考えるときからこんな考え方を持ってたので、興味関心でなく給与水準の高さで業界を選び雇用されに行った。だから、業務内容は好きじゃないけど、世間に比したら多分、仕事が簡単なわりにはそこそこの金額をもらっている方だ。業務内容は好きじゃないけど、この選択に後悔はない。こうして趣味のブログのためにレンタルサーバー代を支払える程度の余裕は持っている。とは言え、逆に言うとその程度だ。この業界で今以上もらうためには、ただでさえ好きじゃない業務内容のために割く時間と気力と脳みそをもう少し増やさなくてはならない。それは嫌だ。業務内容は好きじゃないのだ。でも給与水準の高い業界でさえこんな感じなのに、他業界に勤める周囲の同年代にも、結婚はともかく出産・育児してる人たちが少なからずいて、共働きするにしてもこの程度の年収でよく自分以外の人間を養えてるなあと感心する。その分娯楽を我慢してるのかな、やっぱり。それか実家が極太なのかな? だとしたらシンプルにジェラシー。わかんない。この国は全体として賃金が低すぎるが、それを言い訳に勤務先が給料を上げないなら当然彼奴は敵である。そういう姿勢でいるから社員の士気も上がらないんじゃ!
次、経営陣の連中が「みんなでがんばればなんとかなる」と思ってる。根性論者。そんなわけがないだろ。例えば、当社が柿Aを作ってるとする。他社が柿Bを作ってるとする。当社の柿Aは、小さくて、渋くて、渋抜きしても大して甘くならないくせに、価格は時価。他社の柿Bは、大きくて、甘くて、いつもそんなに高くない。どちらが売れるか? 論じるまでもない。だというのに、○長と肩書のつく人たち、口を開けばこうだ。「確かに商品性では見劣りする部分もありますが、しかしそれが売れない理由にはならない。従業員一丸となってお客様との信頼関係を結ぶことで、どの他社よりも頼られる会社に……」なるわけないだろうが! 確かに・しかし構文で言えば何でも後半が是になると思ったら大間違いだぞ! 素直に商品開発に投資しろ。それかお前らが現場に出ていかに支離滅裂なこと言ってるか確かめて来い。良いもの売って相応の対価もらおうよ……。経営陣だって昔は現場を経験した平社員だったろうにさ、どうして忘れてしまうんだろうね。子供の頃大人から怒られて、自分は理に適った行動を取ってただけなのに理不尽だ、と思っても、大人になったら子供の気持ちがわからなくなって結局同じことで怒る立場に転じちゃうみたいなのと同じなのかな。それって成長でなく退化だよね。それとも現代の経営陣層が、たまたま根性論で何とかなってた世代の人たちだからなのかな。価値観の世代格差には私もこれから気をつけなくちゃ。
年齢帯が理由かもしれないのと関連して、旧態依然とした事務手続きを変えようとしない。さすがに、計算は電卓でとか書面での情報伝達はFAXでとかはないけど、社内で何かの承認を得たいときは、Wordで稟議書を作る→紙面に印刷する→捺印する、という地球に厳しい手続きを取らなくてはならない。みんなシャチハタ使ってるのに。そのシャチハタ、オフィスの隣の100均で買えるのに。しかもコロナ禍で原則在宅勤務になってからは、捺印の次に、→スキャンしてPDF化→メールで担当者へ送信、という、ネットで揶揄される典型的な間抜けフローを踏むことになった。当然、セキュリティの関係でオフィス内の複合機でしかスキャンできない。そのために出社するんですが! 感染リスク侵して紙ゴミ増やしに行くんですが! あ、誰でも押せるシャチハタよりは複合機通した方が原本性が担保されるのかな!って冗談きついぜ。まともな思考を持つ社員はみんなで抗議したが、システムがないので無理ですとの回答だった。電子印鑑も馬鹿馬鹿しいが、それすら嫌なのか。電子に親でも殺されたのか。そんなにハンコが好きか? ポケモンの可愛いやつおでこにいっぱい押してやろうか??
社内で捺印やめれば済むだけなら良いが、顧客向けのインターネット対応にも投資しない。ITを過小評価してる。会社のウェブサイトや、製品購入者用のマイページが、しょっちゅう――具体的には月3回以上システムエラーを起こしてる。もちろんクレームが入る。過去5年くらいこの状態。み●ほ銀行を笑えない。お客様との信頼関係って、どの口が言うんだろうか。商品も悪い、ネット対応も悪い、で従業員がどう頑張ったら信頼を勝ち取れるというのか。信頼って、一旦起こしたエラーは再発しないよう、予算と時間をしっかり充てて、顧客に不便を掛けないよう慎重に改修することでしか得られないんじゃないだろうか。フロントの人間が平謝りしたところで、得られないんじゃないだろうか。安月給で少人数で深夜までメンテナンスさせられてるSEたちは被害者で、システム担当部をまともに整備するか然るべき外注業者に委託するかしない経営陣が悪い。なのに、顧客対応の効率化だーって問い合わせ窓口の対応人数削減して、マイページの「よくあるご質問」に誘導するよう指示されてるからね。マイページが動作しないんですが……ってFAQでも載せとけば?
それから、業務の属人化。部署ごとに○○部って名前はあるけど、統合と分裂を繰り返して形骸化してるし、問い合わせ窓口として社内イントラに掲示されてる連絡先も個人のアドレスだったりして、もう誰がどこまで何を担当してるかわかんない。以前他の部署に確認取らないといけないことがあって、連絡先リストからAさんに目星つけて問い合わせたら管轄外と言われてBさんが担当ですと案内され、Bさんに問い合わせたらCさんを案内され、Cさんに問い合わせたらやっぱりAさんが担当だと言われ、ぶちギレてABC全員を宛先にして「たらい回しもいい加減にしろ・こうしてる間にも関係先が進捗待ってんだよ・手前の業務内容くらい手前で把握しとけ」をオブラートに包んで送信したことがある。その後はAかBかCか、誰だったか忘れたけど引き取ってくれたので、そのまま丸投げして終わった。多分、あまりにも属人化が進行してるせいで担当してる本人も自分の業務を把握してない。個人事業主の集まりみたいになってる。我々何のためにパーティー組んだ?? ついでに、そのせいでどのマニュアルがどこに格納されてるか全く整理されてない。
こんな感じ。効率よくカネを調達する、そのために手間を減らす・時間を縮める・資源を有効活用する、って目的意識を誰一人持ってないから、日々流されるだけ。流れに任せてたら案の定こんがらがって、社員全員が釣り糸で「おまつり」してるみたい。
勤務先、会社やるために会社やってるんだよな。手段の目的化。そうなるともう会社やってる時点で目的は達成されてるわけで、だからあれこれ振り返ったり変えたりするのが嫌なんだよね。手間の多さや時間の長さや資源の浪費、それ自体が会社であるのだから、そりゃそれらを削減してラクになろうとは思わないよな。ラクになったら、会社成分が薄まる。生き残れる会社は時代の変化に柔軟に対応できるところだ、ってよく聞くけど、これって会社やるために会社やってんじゃなくて、資本主義の労働者階級をできる限りラクに生きようって意識が明確になってる、て解釈もできるんじゃないかな。社員だけでなく経営者も。会社が良くなったらラクになるのはみんな同じだから。そういうのが何っっっにもないから、全てが茶番に思えて、私は勤務先をダメだと感じとるわけです!
なんかさ、こういう経済や商業の分析を社会科学って呼ぶけども、人間が勝手に縄張り争いを始めて勝手にルール作って勝手に破綻してんのを、「科学」だなんていかにも確実で神聖で重要なもののように扱ってる薄ら寒い感じ、嫌い。全人類強制で脳みそ改造して利他的な人格にしない限り絶対にうまくいきっこないのに、せめて打破すべき既得権益層に目を向けることすら叶わず庶民同士見事に争い合わされてるだけなのなんか、馬鹿馬鹿しすぎてジョークにもならない。学問にしたいなら、社会科学だなんて特別扱いはやめて、自然科学にまとめたら良いじゃん。チンパンジーの知能とか研究するのと何ら変わりないと思うよ。